第7回和解交渉の報告 2006年12月27日・地裁
今回は原告・被告双方が同席してはじまり、「8%の一時金付加で十分」という(12/15に提出された詭弁だらけの)被告側提出資料<<資料・1=下段参照>>に対する原告側の反論=「上申書」<<資料・2=下段参照>>の説明を行いました。(若干の質疑応答の後)これからの進め方について次のように決まりました。
次回、和解案を提示する。内容は先に原告が要求した三つの基本的な柱(「経済的な不利益の改善」「謝罪」「解決金を別途支払う」)にもとずいたものとする。
次回期日は、2007.1月31日(水) 9時30分
◎
和解交渉報告関連資料
<<資料・1>>(12/15に提出された詭弁だらけの)被告側提出資料
和解に関する上申書(3)
下記「上申の理由」のとおり、被告東京放送が提示した和解案(分配金の8%を和解金として支払う)は、既出の金利、生命表等のデータ前提数値に基づく適切な試算方法によれば、決して不当不合理なものでなく、公正かつ妥当な提示であることをご理解いただき、下記「上申の理由」記載の算出資料を踏まえて、本件和解案の提示を賜りたく上申するものです。
上申の理由
1.試算の方法
本件年金制度改定による年金受給額の減少分に対して、分配金およびその8%に当たる被告提示の和解金(以下、両者あわせて「一時金」という)を運用しつつ、それを取り崩すことによって、上記減少分に充当していくとすれば、一時金残高がいつゼロになるかを試算しました。この試算方法は、原告宮木健吉氏も採用しており(甲29の2)、本件年金制度改定による原告らの「不利益」を試算することにおいて、具体的で理解しやすいものと考えられます。
宮木氏の試算は、毎月の「不利益」分の計算を行うにあたって、年金の額面支給額の差額を用い、充当の原資となる一時金はその手取額を算定の基礎としております。今回、被告が行った試算では、両者とも手取額を用いています。本件年金制度改定による原告らに対する影響の算定にあたっては、手取額を算定の基礎におくことによって、より具体的かつ実態にあった適正な試算が実現されると考えます。
2.試算の対象
手取額は、収入から所得税および住民税を控除したものとなりますので、試算を行うためには本件年金以外の収入金額が必要となります。宮木氏は、陳述書添付の附表(甲29の2)に同氏の国民年金・厚生年金の受給額として3,240,294 円を挙げておりますので、本試算の対象は原告宮木氏とさせていただきました。
3.試算の概要
@本件改定前と改定後の手取額の減少額は、以下の通りです。
(ア)満75歳未満の保証期間では、年額1,774,454 円(月 額147,871 円)となります。(*1) 但し、下記Aのとおり分配金を算入した平成17年においては、年額2,004,193 円、下記Bのとおり和解金を算入した平成18年においては、1,863,386
円となります。
(イ)満75歳以上の終身期間では、年額1,464,162 円(月額122,013 円)となります。(*2) 但し、平成24年は、保証期間と終身期間が並存し、年額1,490,008 円となります。
A分配金は、平成17年の収入に一時所得として算入し、その手取額は19,994,246
円に相当します。(*3)
B被告提示の和解金(分配金の8%)は、平成18年の収入に一時所得として算入し、その手取り額は、1,776,231
円に相当します。(*4)
C上記Aについては平成17年から、Bについては平成18年から運用(利回りは1.13%から利子所得の分離課税分20%を控除)しつつ、上記@のとおりの減少額にそれぞれ毎年充当して、取り崩していった場合、一時金残高がゼロになる時期は、平成30年12月となります。(*5)
D宮木氏の平均余命については、第15回生命表(男子)の死亡率に85%を乗じて得られたものは、162ヶ月であり、82歳5ヶ月となる平成32年6月に到達します。
4.結論
以上から、原告宮木氏の場合、一時金残高がゼロになる時期は、第15回生命表による平均余命を3ヵ月こえ、第19回生命表による平均余命には18ヶ月満たないこととなります。したがって、少なくとも、既出の金利、生命表等のデータ前提数値に基づく適切な試算方法によれば、前回ご説明させて頂いたとおり、分配金の8%の加算を実現すれば、例え今後の運用環境がきびしくとも(年1.13%の金利環境であっても)、「受給者は、平均余命以降まで、手取額においては損を被ることはない」と言えることになります。仮に、この算定基礎のうち、平均余命につき、第19回生命表を用いた場合の算定においても、その差額は、合理的な範囲にとどまるものと思量いたします。
ちなみに、算定基礎データにつき、原告宮木氏において、仮に、現在の金利動向を踏まえて、一時金を利回り2.59%(利子課税源泉徴収後2.072%)で運用いただくならば、第19回生命表の平均余命を利用した場合においても、平均余命に満つるまでまったく手取額の減額なしとなります。(*6)
そして、以上の分析・対照は、資料が開示されている宮木氏につき行ったものですが、同様の結論は、ほぼ同様に、他の原告ら受給者にも言えるところであります。
以上の次第で、被告提示の和解案(分配金の8%を和解金として支給する)は、通常人の社会通念に照らして公正妥当なものであると被告において考える次第であります。よって、以上の事情にご配慮・検討を頂いた本件和解案の提示を賜りたく上申するものです。
以上
<<資料・2>>原告側の反論・原告・選定者からの被告和解案に関する上申書
原告・選定者(以下「原告ら」と記す)は、本年12月6日の和解協議で示された被告東京放送(以下「被告」と記す)の主張を記述した本年12月15日付けの「被告上申書」を検証し、原告らの作成した添付資料(注1)を用いてその問題点を指摘し、原告らの意見を申し述べさせて頂きます。
第1.被告上申書の虚構性
1.割引率からの検討
当初の会社清算一時金は割引率3.5%で算定されたものですが、会社提案の『解決金8%を加算した清算一時金は、逆算すると割引率2.42%に相当する(注2)』という会社発言は誤りで、割引率3.4%に相当します。(資料A・サ行) このことは 8%加算一時金 全額を原資にして3.4%で運用すれば、平均余命(統計寿命)まで改定前と同額の年金が計算上は保証されることを意味しています。勿論、運用前に高額の一時所得課税があれば、原資は平均余命のはるか前で払底します。
即ち被告主張は『割引率3.4%の解決一時金は、一時所得課税で原資が目減りしても、利率0.9%(利率1.13%の手取り利回り)の運用で、平均余命まで損失のない年金取り崩しが可能である』ということになります(注3)。
この不可能を可能とする被告上申書は、単に『虚構の枠組みの中で清算一時金を運用取り崩して見せている』に過ぎません。
2.『手取額』のからくり
課税による目減りを考慮すれば運用原資は 税引き後の手取額(注4)としなければなりませんが、 取り崩し年金月額 を 従来の契約額面の年金月額 ではなく、税引き後の「手取額」とするのは誤りです。将来の「企業年金以外の収入」や「控除条件」が不明で「税制」も不確定である以上、現時点では算定不可能な「課税額」は恣意的にどのようにでも算定できます(注5)。総合課税の税額 から 企業年金分 は分けられません。仮定の「企業年金相当分の課税」が生涯続くという前提で算定した「手取額」には、有意性がないのです(注6)。
被告上申書の試算は「課税額」を大きくすることで「手取額」という架空の数値を小さく算定して、取り崩し可能期間を長く見せているに過ぎないのです。当然のことながら「手取額」という「取り崩し年金月額」を小さく算定すればするほど、取り崩し可能期間は長くなります。
3.不可能な被告取り崩し方法
被告陳述書にある 年金減少分の取り崩し方法 は『税引き後の運用原資全額を 設定利率 で運用しながら、毎月 手取額 を引出して取り崩す』設定になっています。個人が実際に 清算一時金 を試算通りに運用しながら取り崩すには同利率の普通預金 が必要です。普通預金利率 が手取り0.13%の現在の金融情勢では、利率0.9%は全く不可能な取り崩し方法です(注7)。
4.被告上申書の虚構性
上記のように被告上申書は、後述する過大算定した「税引き清算一時金」を原資として、現実には不可能な「運用方法」で、「手取額」という架空の「過少算定した年金月額」を取り崩すという幻の試算です。被告は原告の従来の主張を覆せないと考えたのか、『「手取額」という算定不能な数値を持ち出すことで、満額の年金を取り崩せる』という虚構を作って見せたに過ぎません。被告が今も主張している 税額比較論 も、同じ虚構の最たるものです(注8)。
このような試算でも被告上申書では『平均余命に18ヶ月満たない』との結論しか出せないのです。更に、被告上申書の試算は随所に数値や算定方法に誤りがあります。それらを正した原告らの「手取額」を使った試算結果は、被告試算とは大きく異なります。以下にその概略を述べさせて頂きます(資料A参照)。
第2.被告試算の誤り
1.取り崩し年金額の過少算定
被告上申書では、被告が「手取額」と記載している「取り崩し年金額」を、税増分控除後の年金月額154,013円を147,871円に、75歳保証期間後は128,157円を122,013円と毎月6千円以上過少計算しています(資料A・カ行参照)。これは控除する税額を過大に計算しているからです。被告上申書「別紙1」にある税額は、原告らの試算(注9)より税額合計で保障期間に関係なく改定前で218,226円、改定後で約144,500円過大です。これは当然に控除されるべき「社会保険控除など(注10)」が算定されていないことによるものと考えられます。
2.税引き清算一時金の過大算定
また被告上申書では運用原資になる 税引き清算一時金 が過大に算定されています。被告上申書「別紙2」の@Aの合計額21,770,477円は被告計算の21,269,508円より500,969円過大です。これは被告が 年金清算一時金分の税額 を、 公的年金 と 清算一時金 の収入金額比率で算定していることと、 清算一時金 と 8%部分の解決金 を別の年度に分けて受取る前提で計算しているからです(注11)(資料A・コ行参照)。
3.根拠不明な被告平均余命
現に生きている受給者の平均余命を算定するのに第15回生命表(1980年)に85%を乗じたものを用いるのは論外(注12)ですが、6年前の第19回生命表(2000年)による原告宮木の平成17年4月1日現在の統計寿命(平均余命)は83歳5ヶ月であるのに(注13)、被告上申書のそれは82歳5ヶ月と1年も短く算定しています。なお、原告らが資料の試算で採用した平均余命は、本件措置が強行された平成17年4月時点で最新の平成16年簡易生命表で算定しています。(資料B参照)
4.不可能な被告取り崩し方法
本原告上申書「第1.3.」に記載したように、被告試算のような運用取り崩し方法は実際には不可能です(注14)。
原告らは利率を1年もの定期預金利率のものと仮定して、原資をその定期預金で運用しながら1年分の取り崩し年金額を普通預金に移して取り崩すという、現実に個人が運用できる方法で試算しています(注1・資料D)。
5.被告上申書 算定額との乖離
被告上申書で『原告宮木が一時金残高ゼロになる時期は第19回生命表で平均余命の18ヶ月前』としていますが、原告の試算では33ヶ月(2年9ヶ月)となり被告試算より15ヶ月も早いのです。(資料A・ヌ行)
統計寿命までの不足金額は約513万円・被告計算一時金の21.9%に相当します(資料A・ノ行)。受給者の11%を占める女性の統計寿命は男性より長いので、宮木と同じ条件の女性があるとして試算すると、その不足金額はおよそ1,389万円・59.3%にもなります。原告の男女比を勘案した加重平均では約687万円・29.1%の不足となります(資料A・シ行)。(注15)
しかしこれは定期預金の利率が被告設定の手取り0.9%の場合の試算であって、現行の定期預金手取り利率0.2%で計算すると平均値で約804万円・34.0%の不足になるのです(資料A・D項およびム列)。
第3.原告らの意見
1.変わらない被告の姿勢
被告上申書では、自らが認めた『第19回生命表で平均余命に満たない18ヶ月』を『合理的な範囲にとどまる』と断定しています。しかし、原告宮木で試算すると18ヶ月は約282万円、清算一時金の12%に相当します。被告が『合理的な範囲』という不足額は、原告らの虎の子の生活資金です。
実際には存在しない利率1.13%を『運用環境が厳しい』時の金利と言い、更に『現在の金利動向を踏まえて、一時金を2.59%で運用いただくならば平均余命満つるまでまったく手取額の減額なしとなります』と結論付けています。直近の5年もの国債の利回りが0.96%の時代に、2.59%はおろか1.13%でも普通預金のように運用することは夢のまた夢の金融情勢です。
受給者の年金を他人ごとのように扱う被告だからこそ、本件措置のような不法な年金破壊が出来るのだと断じざるを得ません。
2.原告らの心情
一方、原告らは 死亡率・割引率 を正規の数値にした試算一時金額を算定しました。しかしその金額は、あくまでも 統計寿命 に基づいた 現行利率より高い金利 による受給者の平均的金額です。資料Aでも分かるように5年ほど平均余命が長い女性でも大幅な減額になるのですから、10年・15年と長生きした時の不利益は計り知れません。
それにも拘らず原告らは、和解交渉の意義と諸般の事情を勘案して苦渋の決断により、その金額から 更に大幅に減額した一時金額 を提案しています。
本件 年金原資はもともと原告らの退職金です。他の年金訴訟と異なり、被告に本件措置を行なえる要件は一切ありません。終身年金にすることで年金受給に誘導した 退職金原資 を、会社経営に利用できる間は利用して、経営ミスのためにコストが増えると清算する身勝手は、許されることではありません。
それを正当化するために被告上申書のような虚構の試算を示すのは、原告のみならず裁判所までも騙そうとするものと言わざるを得ません。このような議論は和解の場には相応しくないかもしれませんが、今回の被告の措置で原告らの経済的窮乏は限度に達しており、このような不毛の議論で解決が遅れることに原告らは心底から憤りを感じています。被告の一方的な意志で本件措置が行なわれた以上、不当な利益に固執して虚構の理論を展開する間に、原告らの不利益を少しでも減らす解決策を一刻も早く実現するよう努力するのが、被告の当然の責務であると考えます。
貴裁判所におかれましては上記の資料をご理解頂き、適切な本件和解案のご提示を賜りますようお願い申し上げます。
(以上)